財産を相続するというのは、必ずしもプラスのことばかりではありません。

 

たとえば、ご自身が下記のような財産を相続したとするとどうでしょう?

 

≪遺産の内容≫

預貯金(通帳残高)    12万円

消費者金融からの借金総額 550万円

他の財産 なし

 

このような状況であれば、一般的には「相続人ではなくなる方法があれば知りたい」と思われるのではないでしょうか?

相続は、被相続人が有していた財産をプラスのものマイナスのものにかかわらず全てを承継するものです。ですから、プラスの財産だけを承継して、マイナスの財産を放棄することはできません。

 

しかし、「相続人の地位から離脱する」方法は用意されています。それが「相続放棄」です。

相続放棄は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、自己が被相続人の相続人であることを証明することのできる戸籍謄本及び被相続人の最後の住所を証明する住民票の除票等を添付して「相続放棄申述書」という書類を提出する方法で行います。

書類を提出してから早くて1カ月以内で家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書類が送られてきて手続きが終了します。原則的には、その「相続放棄申述受理通知書」を提示することで、被相続人の相続関係から離脱していることを主張することができます。

改めて家庭裁判所に「相続放棄申述受理証明書」を請求(1通150円)することによって、別途証明書を取得することもできます。

 

相続放棄の期限

 

このように比較的簡単に手続きができる相続放棄ですが、期限があることに注意が必要となります。

法律(民法)では、以下のように期限が定められています。

「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ってから3か月以内に放棄をしなければならない」

 

自分が相続人であることを知ってから3か月以内ですから、一般的には亡くなったことを知った時点からカウントするケースが多いと思います。注意するのは、「法律で3か月の期限が定められていることを知っているかどうかは関係ない」という点です。つまり、「そんな規定があることは知らなかったよ」という主張は認められません。

 

また、先の順位の人が全員相続放棄すると、次の順位の人が相続人になりますが、

この場合には、「先の順位の相続人が全員相続放棄をしたことを知った時から3か月以内」ということになるでしょう。

 

このように期限が存在する相続放棄ですが、3ヵ月を過ぎたからと言って100%認められないというわけではありません。3か月を過ぎたことが、あらゆる状況を勘案してもやむを得ない事情がある場合には認められるケースもあります。どのような場合に認められるかは、家庭裁判所の判断になります。

 

 

期限内でも相続放棄ができなくなってしまう?

 

たとえ、相続放棄ができる期限がまだ残っていたとしても「こんなことしてしまったらもう相続放棄できません!」という規定もあります。

簡単に言うと、「相続人だからできる行為」にあたるようなことをしてしまったら、相続人になることを認めたことになり、「やっぱり相続放棄します」とは言えないということです。

 

例えば、以下のような行為がそれにあたります。

①不動産や動産などを処分した場合(売買や贈、担保の設定など)

②預貯金を相続人自身の用途として消費した場合

③被相続人が貸していたお金などの返済を受けた場合

④遺産分割協議に参加した場合

⑤相続財産を隠したりした場合(背徳行為)

 

などがあります。

葬儀費用を被相続人の財産から支出してもよいかどうかは状況によりますが、原則的にはその葬儀の規模や内容などが社会的通念に照らして妥当である場合には、被相続人の財産から支払ったとしても、それだけでは相続人になることを認めたとは言えず、その後に相続放棄をすることもできるケースが多いでしょう。



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