相続登記をしようとすると、まず書類集めの壁があります。

 

スタートは、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本をすべて管轄の市区町村役場に請求して揃えます。戸籍をご覧になったことがある方、ない方おられるかと思いますが、戸籍は「作りかえられるもの」なのです。80年の人生だったとして、1枚の戸籍で出生から死亡までがたどれることはありません。

例えば、生まれたときの戸籍から、結婚して出ていき自分が筆頭者になった戸籍を作れば、これで2通になります。そのほかにも法律で様式が一律に変わったために新しい戸籍が作られることもあります。また、本籍地を変更すれば、前の戸籍謄本は除籍になり新たな戸籍になります。

 

このように、出生時に記載されていた戸籍謄本から死亡した時に記載されていた戸籍謄本までをもれなく集める必要がありますが、何回も変わっている人であれば枚数も多くなってくるわけです。ちなみに登記実務においては、13歳ごろからの戸籍があれば相続登記はできるものとされてきました。実際に生殖年齢を考えると13歳ごろからの相続関係を証明できればよいと考えるのも妥当と言えるのかもしれません。ただし、銀行の手続きなどさまざまな相続手続きをすることを想定し、出生から死亡までをもれなく取得することをおすすめします。

 

次に、相続人が誰かがわかったとしても、実際にその相続人が存命でなければなりません。もしくは、被相続人の死亡日よりも長く生きていなければ相続人にはならないわけです。そこで、それを証明するために各相続人の現在の戸籍謄本を取得して相続人であることを証明することになります。発行日は、少なくとも被相続人の死亡年月日よりも後に発行された戸籍謄本でなければ、相続手続きができません。

もう少しわかりやすくいいますと、被相続人が平成30年5月10日に亡くなっていたとします。相続人の長男は以前に取得した自分の現在の戸籍謄本を持っていて、内容も今と変わらないからこれを相続登記に使えるだろうと考えています。その手元にある戸籍謄本の発行日が、平成30年5月10日以降であれば一応被相続人より長く生きていることがその戸籍謄本で証明できますが、平成30年5月10日以前に発行されたものであれば、書類上は被相続人よりも長生きしていることは証明できないわけです。

 

 ここまでまとめますと、

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本一式

各相続人の現在の戸籍謄本

が必要となります。また、代襲相続の場合や数次相続(相続手続きしないうちに相続人が亡くなること)の場合には、さらに取得する戸籍謄本等が増えてきます。

 

次に、登記簿に記載されている被相続人の住所と被相続人の最後の住所とのつながりのわかる住民票の除票または戸籍の附票が必要となります。登記実務では、登記簿に記載されている住所・氏名が登記申請に添付している書類の住所・氏名が一致して同一人物と判断します。したがって、例えば以下のようなケースで説明してみます。

(登記簿上の被相続人の住所・氏名)

大阪市北区西天満二丁目5番16号

中野孝弘

(死亡時の住所・氏名)

大阪市中央区心斎橋一丁目3番17号

中野孝弘

 

この場合に、最後の中野孝弘さんの住民票(除票)を取得して「前住所欄」に大阪市北区西天満二丁目5番16号と記載されておれば、そのつながりが一致しますので、同一人物と証明されます。

ところが、登記簿上に記載された住所地から2回以上転居して亡くなられた場合には、最後の住民票(除票)を取得しても「前住所」欄には大阪市北区西天満二丁目5番16号は記載されていません。そうすると、住民票の除票では中野孝弘さんの住所のつながりを証明できないことになってしまいます。

 

 そこで、戸籍の附票を取得することで解決する可能性があります。戸籍の附票とは、例えばAという地に本籍地を置いている間に住所を3回移転したとしても、戸籍の附票にはその変遷が記載されているというものです。ですから、2回以上転居していても本籍地を変更していなければ、戸籍の附票を取得することで、つながりが記載されている可能性が高いのです。

ただ、これにも例外があり、以前は除籍から5年間で廃棄扱いがされていたこともあり、古いものになると請求できなくなっているものもあります。(現在は平成26年6月19日時点で消除されていないものは150年間保管されるとの法改正がされています)

 

 それ以外には、不動産を取得する相続人の住民票を添付します。また、登録免許税の算出の基となる「不動産の評価額を証明する書類」が必要です。具体的には、毎年固定資産税の支払い通知書が管轄の市区町村役場から送られてくるので、そこに不動産の価格が記載されています。それをコピーしてもかまいません。また、紛失したなどでそれがなければ、管轄市区町村で、相続人の1人であることを証明する戸籍謄本等を添付して「評価証明書」を取得することもできます。

 

 相続登記には、ほかにも遺産分割協議で取得者を決定すれば「遺産分割協議書+相続人の印鑑証明書」が必要になりますし、遺言で取得者を定めていた場合には遺言書を添付するといったように、ケースバイケースで添付書類が変わってきます。

 

 相続登記は、不動産登記の中でも最もそろえる書類の多い申請といえます。

チャレンジされたい方は法務局の無料相談などを利用して自分で作成してみるのもよいかもしれませんね。




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