「出世払いでいいよ」という会話をたまに聞くことがあるかと思います。

この会話では「いいよいいよ、おごるよ」というのをユーモアを込めて言っているケースがほとんどだと思います。

 

ただ、この出世払い、実は過去に裁判で争われたことがあります。大正時代の話で、その時には実際には上記のような軽い会話で交わされた約束ではなかったとは思います。

 

今回は、この「出世払い」を法律的に解釈してみたいと思います。

 まず、前提知識として、法律には「条件」と「期限」というものがあります。順に説明していきます。

 

【条件】

(例)「第一志望の大学に合格したら、自動車を買ってあげる」

という場合、「第一志望の大学に合格する」を条件として「自動車を買う」という約束(契約)は成立します。不合格なら、成立しませんから、自動車は買ってあげなくてもよいことになります。

 

【期限】

期限には、将来のいつの時点で起きるのかがわかっている場合(確定期限)と、いつかはわからないがその期限はやってくる(不確定期限)があります。

(例)「私が50歳になったら、この時計をあげよう」(確定期限)

     「私が死んだら、この時計をあげよう」(不確定期限)

このような感じです。

 

では、「出世したら、お金を返す」はどちらなのでしょうか?

条件だとすれば、「出世したら返済し、出世できないことがわかったら返済しなくてよい」ことになります。

期限だとすれば、「出世したか、または出世できないことがわかった時点で期限が到来するから返済しないといけなくなる」ことになります。

 

では、先ほど触れた大正時代の裁判ではどのような判決が下されたのかというと、

「出世払いとは不確定期限であり、出世できないことが明らかになったときは、貸主は借金の返済を請求できる」(大審院大正4324日判決)

 

と言っているのですね。

 

ということは、出世払いを「期限」と解釈するのであれば、「出世払いでいいよ」は、いずれ出世したか出世できないことがわかった時点で返済しないといけないことになってしまうのですね。




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