令和4年1月31日から「実質的支配者リスト制度」というものがスタートしました。
今回は、これについての概要を説明していこうと思います。

まず、株式会社は誰のものか?というお話から始めましょう。
一般的なイメージとしては、「会社は社長さんのもの」という感じかと思います。
実は、株式会社の根本的な考え方は、以下のようなものなのです。

「株式会社を作りたい!でも、お金がないなぁ」と考えている山田さんがいるとします。
山田さんは、会社にお金を出資してくれそうな人を探してみます。すると、松本さんという少し羽振りのよい知り合いが話を聞いてくれることになりました。後日、山田さんは実際に会って、自分が立ち上げたい会社の事業内容や売り上げ目標などを松本さんに説明し、「じゃあ、1000万円出しましょう」ということになりました。

このようにして、山田さんは松本さんの資金援助を得て資本金を1000万円、山田さんを社長(代表取締役)とする株式会社の設立に至ったわけです。

 

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さて、この株式会社は、誰の持ち物でしょうか?
実は、松本さんの会社という判断になるのです。

山田さんは、実質的に会社の実務や経営面の責任者として会社を運営していきます。会社ですから当然利益を出していく必要があるわけですが、その利益の中から山田さんの役員報酬が支払われます。従業員を雇うのであれば、得た売り上げから経費を差し引いて、給料が支払われます。
そして、出資をした松本さんには、会社の利益の中から配当金としてのお金が支払われます。このように出資をして配当を得る人を株式会社では「株主」といいます。


かつての法律では、株式会社の設立には1000万円の資本金が必要でした。また出資者(発起人)は7名を必要としていたので、かなり株式会社の設立はハードルが高かったと言えますね。
ところが、平成18年の法改正でこの制限がなくなります。「資本金は1円以上、出資者(発起人)は1名からで
OK」となります。そうなると、スタートから資本金集めや出資者(発起人)集めに奔走する必要もないわけです。「会社を作りたい」と思えば、その人が自ら出資し、社長になればいいわけですね。

なので、現在日本に存在する多くの小さな株式会社の場合、結果的に「株主=社長」となっているケースが多いわけですが、理論的には「株主=お金を出す人」「社長=会社経営の責任者」と完全に分けられています。そして、株式会社は株主のものなのです。
会社が株主のものであるということはどういうことかというと、会社の重要な事柄は株主総会で決定するようにできていますので、原則としてたくさん株式を持っている人(たくさん出資した人)の意見が通り、それが会社の決定となるわけです。

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ここで話を戻しまして、「実質的支配者」というのは、「株主総会では実質的にこの人(たち)の意見に左右される」という株式数(議決権)をもっている人(たち)のことをいいます。
例えば、ある株式会社の株主構成が、「Aさん80% Bさん20%」である場合には、Bさんがどれほど反対してもAさん1人の意見が会社の決定になりますよね。これが「実質的に会社を支配している」という意味なのです。


会社の登記簿(登記事項証明書)を見ると、資本金・発行している株式数や役員の氏名、事業目的などは記載されているのですが、その会社の株主が誰なのかは記載されていません。
つまり、登記簿(登記事項証明書)を見ると、会社のいろいろなことはわかりますが、実際に誰の意見で会社が動くのか、というのがわからないわけです。

そこで、銀行などの金融機関で株式会社が融資を受ける場合などにはこの実質的支配者を把握するということがあるわけです。そして、令和4年1月31日から「実質的支配者リスト制度」が運用スタートしました。簡単に言うと「法務局で実質的支配者の情報を保管し、その証明書を発行してもらえる制度」です。この制度が創設された趣旨は、株式会社の実質的支配者に関する情報を法務局が把握しておくことにより、マネーロンダリングやテロ組織への資金援助など、会社の悪用を防ぐために必要に応じて金融機関へ情報提供を行うためです。

 

さて、ここまでお読みいただいて、なんとなく実質的支配者とは何なのか、が理解できたという方は、次回の記事「実質的支配者の判断」もあわせてお読みいただけると幸いです。



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