前回「消滅時効」についてご紹介しました。一定期間の経過により、債務者が時効の効力を援用することによって債務が消滅する、というものでしたね。
今回は、その逆バージョン時効取得」ついて解説していこうと思います簡単にいうと、文字通り「ある一定の期間を経過すると権利が取得できる」というものです。
ただ、いくつかのポイントがありますので、それを含めてご紹介します。

まず初めに、時効取得の話の中で「善意」「悪意」という言葉が出てきます。一般的にいえば、「善意」とは他人のために良かれと思うことを指します。また「悪意」とは他人を害しようとする気持ちを指します。
しかし、法律においてはここが異なってきます。法律でいう「善意」とは、「法律上の効力に影響を及ぼす事実を知らないこと」をいい、「悪意」とは逆に「法律上の効力に影響を及ぼす事実を知っていること」をいいます。つまり、「知らずにやった」か「知っていてあえてやったか」ということです。

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ここで、時効取得の要件についてみていきましょう。

【要件①】
「所有の意思を持って占有すること。」
占有とは、自分のテリトリーに置くということです。そして、所有の意思があるというためには、客観的にみて所有の意思がなければいけません。すなわち、他人から借りている場合にはいくら自分の物だと心で思っていても要件にはあてはまりません。また所有者であれば、取らないような行動をとっていたようなケースでは要件が否定されます。


【要件②】
「平穏・公然と占有すること」
平穏というのは、暴力を使ったり、脅したりして占有したりしないことです。
公然というのは、コソコソ占有しないということです。


【要件③】
「占有し始めたときに善意無過失であったこと」
⇒この場合には、10年間占有し続けることによって取得時効が成立します。
先ほど説明したように、善意とは「自分の物ではないことを知らずに占有し始めたこと」です。そして、無過失とは「そう考えたことに過失がなかった」「そう考えるのも無理はないな」ということです。
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では、悪意や過失があった場合はどうなるのか?ですが、この場合にも取得時効が成立しないわけではありません。取得時効が成立する期間が20年になります。

このような要件をすべて満たしたら、消滅時効と同じように「時効の援用」をすることによって取得時効を成立させることができます。援用の方法は法律上決められていませんので、内容証明郵便などでもかまいません。ただし、援用したからといって相手方が必ずしも「わかりました。ではあなたの物と認めます」となるかどうかはわかりません。この時効の援用は、援用の通知を送った相手方の承諾は必要ないのですが、相手方としても自分の名義の物の所有権を喪失するのですから上記の要件の不備をなにかしら主張して「取得時効は成立していない」と争ってくるかもしれません。


さて、取得時効が成立した場合は、いつからその人は所有者になるのでしょうか?考えられるのは2つです。

(1)占有を始めたときから
(2)時効を援用したときから

⇒正解は(1)です。占有し始めたときからその人は所有者であったものとされます。

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不動産登記においても、「年月日時効取得」と占有開始日を原因日付として登記申請をすることによって所有権移転登記ができます。ただし、登記簿上の元の名義人と共同で申請しなければなりませんから、相手方の権利証や印鑑証明書の提出、実印の押印など協力が必要となります。不動産ともなると、協力が得られない場合も多いでしょうから、その場合には訴訟で判決をもらう必要があります。判決をもらうと、判決書を添付することにより時効取得者が単独で登記申請を行うことができます。
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以上、簡単ではありますが、取得時効についてご紹介しました。



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