不動産登記では、どんな登記をする場合に、どの立場の人がどのような書類を法務局に提出しなければならないか、というのが不動産登記で決められています。

例えば、不動産売買のケースにおいては、
売主さんは、登記識別情報(登記済証)・印鑑証明書・委任状(司法書士に依頼する場合)
買主さんは、住民票・委任状(司法書士に依頼する場合)

(このほかに登記原因証明情報という登記の原因となった事実関係を記載したものを提出しますが、実務においては基本的には売主様に署名捺印してもらって提出しますが、連名でも構いません)

ここで問題となるのが、売主さんの印鑑証明書・買主さんの住民票です何が問題かといいますと、これらは、日本に住所を登録しているから発行される証明書だからです。
では、日本に住所の登録がない人は不動産登記を申請できないのか?そんなことはありません。もちろん、できます

では、それらの証明書の代わりに何を提出すればよいのでしょうか?

まず、買主さんの住民票の代わりになるものが、
① 登記名義人となる者の本国又は居住国の、政府の作成に係る住所を証明する書面
② 登記名義人となる者の本国又は居住国の、公証人の作成に係る住所を証明する書面 + パスポートの写し(原本証明あり、有効期限内・写真ページ)

もう少しわかりやすく説明しますと、
①は外国に住民票のような制度があり、政府が発行したものである場合です。
②は公証人作成の「供述宣誓書」とパスポートのコピーに「原本と相違ありません」と奥書き署名したものをセットで提出します。または、公証人がパスポートの写しとセットで認証している場合には、奥書きした書面は必要ありません。
①②ともに、原本だけでなく、翻訳したものを添付しなければなりません。翻訳については、誰が作成しても構いません。

次に売主さんですが、こちらは日本に住所がないため印鑑証明書が取得できないわけですね。なので、それに代わる書類を提出する必要があります。これにあたるのが、「署名(サイン)証明書」です。これは、領事館において領事の面前で署名(サイン)し、それが間違いなく本人によってなされたことを領事が証明したものを指します。
日本に住所がないものの、一時日本にいるような場合には日本の公証人に証明してもらう方法もあります

 

このように、日本に住所がない人が不動産登記をする場合には、少し手間がかかります

さらに、令和6年4月1日施行の法改正によって、日本に住所がない人が不動産の所有者になる場合には、原則として「日本における連絡先」を登記しなければならなくなりました

この日本における連絡先というのは、日本に住所を有する個人でもよいし、法人でもよいです。ただ、勝手に「この人を日本における連絡先として登記しとこう」というのはトラブルの元ですから、登記申請時に日本における連絡先となる人の承諾書(実印押印+印鑑証明書付)の提出を求められます

もし、誰も日本における連絡先として登記する人(法人)がいない場合には、「日本における連絡先がない旨の上申書」を作成して提出します。

 

以上、とてもざっくりとではありますが、日本に住所を有しない人が不動産の名義人になる場合の取扱いについて解説してみました。



お応援お願いします!!
 ⇩ ⇩ ⇩

にほんブログ村 士業ブログ 司法書士へ
にほんブログ村